英語民間試験導入見送りを評価したい
先日、一つ大きなニュースが出ましたね。
大学入試改革における、英語民間試験導入の延期発表
各方面からブーイングがとまりません。
共通IDの申込方法まで発表され、混沌としながらもこのままなんとか進められるのかと思っていた民間試験の活用。
ここにきての延期。
もちろん、マイナス面も大きいでしょうが、私は今回の延期についてはプラスの評価をしたいと思っています。
専門家でもなんでもないので、あくまで現状出ているニュースからの分析にはなりますが、私が今回の決断を評価する理由を述べていきたいと思います。
4技能を測るには民間試験活用しかなかった
「日本人は英語を読むのは得意だが、その他は苦手である」
「中高大と10年間も英語を勉強しているのに、ほとんどの人は英語が喋れない」
「受験英語は大学に合格するまでがゴールで、その後は全く活かされない」
こういった今までの英語教育の批判があった中で、入試改革における4技能を測るテストの導入は一つの目玉であったはずです。
しかし、膨大な作業を必要とする一連の入試改革の中で、4技能を測ることができる英語のテストを開発することは現実的にかなり厳しい状況です。
そういった場合に既存のテストを使うという方針は、そんなに悪くなかったと思います。
しかし、その方針の中で各大学の足並みが揃わなかったり、不公平性が問題となり、各所から批判が殺到していましたよね。
そして、このままでは間に合わないと判断し、延期を決定したのだと思います。
繰り返しになりますが、この時点での延期の決断を私は評価します。
今の時点で不利を被ったり、影響を受けた現高2生はほとんどいないはずです。
ただ、この制度が予定されていたので、安全志向に流れた現受験生は影響を受けているかもしれませんが。
発表されていた内容では、受験年の試験しか活用しかできないという決まりだったので、現時点で民間試験に備えた準備はそこまで必要ではありませんでした。
もともとCEFRのA2レベルでほとんどの大学で十分であったため、最低限の4技能
能力を測るためのものだったのです。
むしろ、来年無理矢理この制度を採用し、なにか不備があり、受験生が迷惑を受けることが最も避けるべきことです。
今回の延期で最もマイナス方向のインパクトが大きかったのは、恐らく民間の業者でしょう。
しかし、民間業者は営利を目的として準備していたはずなので、「市場を間違えてしまった」という他の民間企業と同じ過ちをおかしたと考えることができます。
(その企業からしたら、冗談じゃないと思われるでしょうが)
責任者達はどの道を選んでも茨の道だった
文部科学省の官僚などをはじめとする責任者達は4技能を測る試験を採用すると決めた時点で茨の道を歩んできていました。
このタイミングでの中止発表はとんでもない量のバッシングを受けることは容易に予想できたでしょう。
そして、このバッシングを恐れ、なんとか来年上手く乗り切る可能性にかけながら続行することも一応はできました。
しかし、先ほども書いたように無理な制度のまま続行し、来年の受験生に悪影響を与えるのは最も避けるべきでしょう。
そういった意味で、上手く行く可能性に賭け、自分たちの保身に走らなかったのは評価できると思っています。
このタイミングでの中止は本当に各方面からの反発が強そうですからね。
共通テストの英語は高いクオリティーの問題が出そう
共通テストの過去2年の試行調査を見てみると、共通テストは質・量ともに受験生の力を測る良いテストとなりそうです。
今までのセンター試験もかなり英語の基礎力を測るうえでは、上質のテストだったと思います。
ただ、発音・アクセントの 問題が微妙であり、英語が得意な生徒にとって時間制限も含めて簡単すぎるテストだったと思います。
その点で言うと、共通テストは時間制限も厳しく、難易度も上がりそうな予感ですね。
文法が直接聞かれるようなことはありませんが、リーディングやリスニングで間接的に文法事項を聞くような良問となりそうです。
こういった背景をふまえても、民間試験を使うのではなく、共通テストで公平性を保ったテストを他の科目と横一線で行うのが、現状では最善策かと思います。
そもそも50万人規模でライティングとスピーキングの力を測るのはあまりにも無理がありそうですね。
今回の決断が英断だったと後から振り返ることができるよう、また再構築をしていってもらいたいですね。